Inov-8(イノヴェイト)は、自然の山野を走るトレイルランニングの聖地イギリスの湖水地方に本社を抱えるトレイルランニングの靴で有名なブランド。そのInov-8社に私は1年ほど赴任して現地のメンバーと一緒に仕事をしてきました。そんな会社に赴任したにも関わらず、私は実はランニングは大嫌い。1年たった今でもそれほどランニングは得意では無くウォーキングしかしないのですが、今ではInov-8の靴を何足も愛用しています。どうやってランニングが大嫌いでウォーキングしかしないおじさんがトレイルランニングブランドInov-8のファンになっていったのかご説明します。
Inov-8って一体どうやって読むの?
Inov-8というブランドを知ったのは4年前。それまで私は別の業界に居たのですが、スポーツが大好きだった事もありスポーツ業界に転職しましたがそこで初めて見たのがこのロゴ。『イノヴっていうブランドなのかな?』というのが最初の頭に浮かんだ事でした。
実はスポーツ好きとは言いながら、私はランニングは大嫌い。30年以上前大学時代にサッカーをやっていたのですが、その時の厳しい練習の反動でボールを蹴らずに走るだけのランニングが大嫌いになってしまったのです。しかも山や丘を走るクロスカントリーは大の苦手だったので、山野を走るトレイルランニングをやろうと思ったことも無く、トレイルランニングのブランドとしてとても有名なInov-8の事を全く知りませんでした。革新的(Innovative)という意味のイノヴェイティブの音を使い、素足感覚の商品を作るブランドである事を伝えるために数字の8を足の形にした上でInov-eight(イノヴェイト)と読ませているのだという事はわかりましたが、このロゴじゃ英語がわかる人以外には伝わりにくいよなー、というちょっと他人事の第一印象を持っていました。軽くて履きやすいだけで無くアウトソールが柔軟な上にグリップ力が強い、という説明を聞いても、トレイルランニングにはそういう機能が必要なんだな、という自分には全く関係ない世界の話として聞いていました。
これがちょうど3年くらい前の話です。まだこの当時は自分が湖水地方に行くなど思いもよらず、ただこのブランドってそういうちょっと尖った商品を作っているんだ、という程度の理解でした。
何だこの靴。濡れた芝生の上でも全然滑らない!!
ただトレイルランニングをやる友人から、『Inov-8の靴は本当に良いですよ。』と聞いたので一度試してみようと思って買ったのがFlyrock345GTX。防水だし出張の時や普段使いに履いてもおかしくないデザインだから、というランニングとは全く別の目的で買った靴でした。デザインも気に入り履きやすかったので、週末の普段使いの靴として便利に使っていました。
そんなある日、週末のおじさんサッカーで大学の芝生のグラウンドを貸してもらったのですが、サッカースパイクは禁止だったので芝生でも使えるトレーニングシューズを持って行きました。ただ、試合の直前に雨が降り、濡れた芝生のグラウンドではアウトソールにちゃんと滑り止めが付いたトレーニングシューズでもつるつると滑って全くプレーにならず。その時ふと、グリップ力が強いという評判のInov-8の靴を履いてグラウンドまで来た事を思い出し、スパイクから履き替えたところが驚きの結果。さっきまでつるつると滑っていたグラウンドの上で全く問題なくプレーが出来るでは無いですか。このグリップ力は凄い、という事は実感しましたが、その時はそこまで。雨の芝生のグラウンドの上でスパイク禁止のサッカーをやる経験などそれ以降全く無く、その後も普段使いの靴として便利に使っている程度でした。
このしばらく後で、Inov-8社はグラフェンと言う素材を使ってグリップ力を更に強化しながら強度も高めた商品を開発しました。このもともとのシューズでもここまでグリップ力が強かったのは驚きですが、グラフェンでグリップ力を更に高めたG-Gripと呼ばれる商品群がこの先Inov-8社の主流になっていきます。この後私が試す商品は皆G-Gripの商品群です。
湖水地方で一日ウォーキングしても、、、あれこの靴だと疲れない??
そんな私でしたので、昨年Inov-8に赴任したあと現地のスタッフから一緒にランニングしようと誘われても丁重にお断りをしていました。ただウォーキングは好きだったので、Inov-8のハイキング用シューズの一押し、Roclite315GTXを買って湖水地方の素敵な風景の中を週末あちこちとウォーキングしていたのですが、ある日ふと自分が歩いた距離を見てびっくり。なんと一日で20キロ以上歩いていたのです。
ウォーキングは昔から好きだったので長距離を歩く事は多かったのですが、一日20キロも歩くとずっしりと足が疲れて翌日筋肉痛になっていたはずが、なぜかその時はそれほど疲れを感じていなかったので自分がそんなに長距離歩いたとは思ってませんでした。後から考えると疲れを感じなかった一番大きい理由はグリップ力に対する信頼。歩いている時に地面が濡れていたり滑りそうな岩の上を歩いたりする時は普通多少身構えて歩くため足が緊張するものですが、靴のグリップ力に対する絶対の信頼があったので、湖水地方の湿っているフットパスでもあまり緊張せずに歩いていたのでしょう。それに加え、柔軟性の高い柔らかいアウトソールのおかげで多少でこぼこの地面を歩いても足の裏が凹凸を吸収してくれるので太ももに対する負担が減る、軽い靴なので足に負担がかからない、ということも私が疲れなかった要因だったと思います。それはまさにInov-8がトレイルランニングの選手に強くサポートされているグリップ力、アウトソールの柔軟性、軽さという3つの特徴そのもの。トップ選手向けに作られた靴が私のようなウォーキングしかやらないおじさんにも大きなメリットを与えてくれることを実感しました。
このころは平日10-15キロ、休日20-30キロほど歩く生活でした。Inov-8のシューズの歩きやすさと湖水地方のウォーキングの魅力がそんな生活を後押ししてくれていたのだと思います。
この靴だと足の指先が自由になる!!
そうなると、今度は別の商品も試したくなってきます。ハイキング用途の一押しはRocliteシリーズですが、ランニング用途の 一押しはTerraultraG260。今の世の中の流行りの厚底にばねを入れた反発力のあるランニングシューズとは全く逆の発想の、素足感覚を大事にしてソールの前後の高低差を無くしたゼロドロップのシューズですが、選手からの評判が非常に高いシューズだったので、これを試したところ今度は別の驚きが。
疲れないで歩けるというのはRocliteと同じなのですが、この靴を履いて歩くと靴の中で足の指がゆったりと広がっていくような感覚がするのです。もともとこの靴はInov-8の商品群の中でも一番幅が広くできているのですが、その上に素足感覚を大事にする靴の形状がそのような感じ方をさせてくれたのでしょう。私は若干外反母趾の傾向があるのですが、この靴を履くと指がゆったりと広がりとても快適。長い間この靴を履いていれば外反母趾が治るのでは、とさえ感じさせてくれます。残念ながらこの靴は防水では無いので、普段使いの靴としてはちょっと使いにくいのですが、晴れの日のウォーキングの友としては最高。この靴だったらランニングしても良いかも、と思わせてくれるような履き心地。実際この靴を履き始めてから、ちょっとしたジョギングを始めるようになりました。(といっても5キロを40分かかって走るような、ほぼ早歩きのようなスピードでしたが。。。)
この素足感覚のゼロドロップシューズというのは、実はInov-8が10年以上前に世の中に先駆けて出したコンセプト。今の世の中のマラソンのスピード競争で使われている厚底・ばねを使った反発力とは全くの逆の発想なのであまり表立って訴求されませんが、足に気持ち良い靴、足にやさしい靴という意味では私のようなおじさんウォーキングには実は最適の靴なのかもしれません。
Inov-8の靴は、ここで書いた以外にもいろいろな魅力があります。この先そういった魅力の一つ一つを取り上げていきたいと思います。
何よりも、Inov-8社に集まるメンバーが魅力的。
このようにして、Inov-8のロゴの読み方も知らなかった私がシューズの魅力に魅せられてだんだんといろいろな靴を試すようになり、Inov-8の商品のファンになっていきました。ただそれ以上に私がこのブランドが好きなのはそこに集まっているメンバーの魅力。
Inov-8は湖水地方のステーブリーという小さな街に本社がありますが、そこに集まっているスタッフは全く別の地域から集まってきています。イギリスだけで無く海外からも集まってきているメンバーに共通しているのが、トレイルランニングが大好きで、トレイルランニングをやる人に最高の商品を届けたいと思っている体も心も若いメンバー。そして湖水地方が大好きで、自然環境を守る事にもとても意識が高く、自分が働いている環境を最高に楽しんでいるメンバー。彼らとの仕事はとても楽しく、気持ちのいいものでした。そういう魅力的なメンバーが世の中のトレイルランニング好きの人のために最高の商品を届けようとしているシューズは、トレイルランニングなんて全くやるつもりもない私のようなおじさんのウォーキング用途で使っても最高のものです。その良さをこの先このブログの中でお伝えしていきたいと思います。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございます。今回はどうやってランニングなんて大嫌いだった私がトレイルランニングブランド Inov-8のファンになっていったかの話をまとめさせてもらいました。Inov-8の商品がトップランナー向けの尖がった商品というだけでは無く、私のような一般人にとっても魅力のある商品であるという事が少しはお判りいただけたでしょうか?この先もう少し細かい商品の話や開発の裏話など順次まとめていく予定です。こういう話が聞きたいというリクエストがありましたらぜひご質問ください。